活動報告
大阪府3市の取り組みについて(高槻市・守口市・茨木市)
2018年10月3日(水)~5日(金)
高槻市 ・保育士・保育所支援センターについて
守口市 ・安否確認ホットラインについて
茨木市 ・一人も見捨てへん教育の取り組みについて
Ⅰ高槻市(保育士・保育所支援センター)
《概要》 大阪府の東北部、京都府に隣接する位置にある、面積105.29㎢、人口35万3千人弱の中核市である。保育士・保育所支援センターについては、平成26年に開設し、市立保育所の所長経験者がコーディネーターとして保育所等へのスムーズな就職を支援するもの。経験豊富な所長経験者であるため、求職者のニーズにあった就職先の提案や、求職者雇用者双方のニーズ調整、各種の相談事業などきめ細やかなフォローを実施している。また、こちらから積極的にアプローチするために、商業施設での出張相談会や保育士養成施設(大学、専門学校など)とも連携して潜在保育士の発掘に取り組んでいる。コーディネーターは職業紹介責任者講習を受け、大阪労働局に事業の届をして開設。対象とする職種は、保育士だけでなく、看護師、給食調理員、栄養士など保育園に必要な職種を対象としている。待機児童対策の一環として始めたこの事業は、施設整備も併せて平成24年には70名近い待機児童がいたにも関わらず、現在は待機児童ゼロとなっている。
実績としては、100人以上の求職者に対し70人近い再就職の斡旋ができている。
《提言》 どこの市町村でも、保育士不足は深刻な問題となっている。
保育士がいないために受け入れができず、待機児童が発生してしまう現状があるようだ。深谷市においても、保育所施設整備費の補助金を出すなど、待機児童対策に有効な方策をうっているが、保育士はまだまだ不足しているようだ。保育士免許を持ち積極的に就職を希望している方や離職後の期間が長い、未経験などで不安を持ちながらも就職を希望している潜在保育士など希望者は少なくないと思う。きめ細やかな相談に乗れるような人材の確保などの難しい面もあるが、施設整備とともに、人財確保の面から、支援センターの開設は有効と感じた。
Ⅱ守口市(安否確認ホットライン)
《概要》 大阪平野のほぼ中央部に位置し、大阪市、門真市、寝屋川市に囲まれた平坦な地形である。人口は14万3千人と、深谷市とほぼ同じくらいの人口で、高齢化率も約28%と類似した市である。近年、社会問題化している孤独死に取り組むために、地域コミュニティーを活性化し、そのネットワークを拡大することで高齢者世帯や独居世帯を地域で見守っていこうとするものである。警察、消防本部、民生委員・児童委員、新聞販売店、郵便局、電力・ガス会社など市内事業所と連携をしながら見守り活動を行うとともに、地域住民に「気づき」の感度を高めてもらい、「あれっ‼ 変だな」という、少しでも異変を感じたら、専用電話の安否確認ホットラインへ通報してもらうというシステムである。専用窓口があることで、市民への啓発もしやすく、また、市民からも窓口が一本化されている安心感があるとのことだった。通報を受理した後は、第一次の情報収集を行い対応課の決定、その後対応課で要援護者名簿の情報や生活保護対象者、生活援護資金の貸し付け状況、介護認定サービスの利用状況、保健所等の情報などから緊急性を判断し、即日対応をしている。対応手順や確認のポイントなどマニュアルも細かく整理されており、関係部門との連携もしっかり図られていた。
《提言》 社会問題化している孤独死については、どこの市町村でも起こりうる問題である。これをいかに防ぐかは日ごろの見守り活動が大事だが、少しでも異変を感じた時に通報できるところが、専用電話で一元化されているところはいいことだ。しかし、1年間で14件前後の通報件数はまだまだ周知不足かと感じた。子どもの見守り活動も同様だが、主体はやはり地域住民と考えると、もっともっと周知徹底を図るべきなのではないだろうか。ただ、いろいろな部門で見守り活動を続けていくのも大事だが、いざという時に地域住民が通報する際、専用電話で通報先が一元化されているのは、住民にとってもわかりやすく、安心感があるというのは感じた。今後の検討課題としていきたい。
Ⅲ茨木市(一人も見捨てへん教育の取り組み)
《概要》 茨木市は淀川北の大阪北部に位置し、京都府に隣接した人口23万2千人の市である。茨木市の取り組みは、郡山小学校の学力向上の取り組みがメディアに取り上げられたのがきっかけという。この小学校は大阪万博の際に山を切り開いて団地を造成し校区の半分以上を団地が占め、かつては千人以上の児童が在籍したマンモス校だった。平成20年の全国学力調査の成績が全国平均を大きく下回り、市内でも最も低い学校だったが、平成25年の学力調査で全国平均を超えた実績がある。この要因には、家庭の経済状況が厳しい子供が多い中、「暮らしのしんどさのせいにしたら、この子らずっと浮かび上がれん。教育の機会均等を守るのが教師の役割やないか。」という当時の校長の教職員への訴えから始まった、教職員総がかりの「チーム郡山」の取り組みだという。放課後、子供たちが教師に質問しながら宿題に取り組む「学びルーム」や朝ごはんや夜更かしをチェックする「生活振り返り週間」などの取り組みの成果である。教育委員会もこの取り組みを支援し、教員免許を持つ専門支援員を配置し、授業中でもついていけない子のそばについて指導をする、また、スクールカウンセラーやソーシャルワーカーを配置するなど「一人も見捨てへん教育」の熱い思いを支援している。平成19年に策定された「茨木っこプラン22」、その後の「茨木っこステップアッププラン25」「茨木っこジャンプアッププラン28」と3年ごとに更新しながら現在の「茨木っこグローイングアッププラン」に続けている。特徴的な取り組みとしては、正答率80%以上の学力上位層を増加させることはもちろん、40%未満の学力下位層を減少させることに焦点を当てている点。みんなが学習についていける体制を作ることで結果的に平均点の上昇につながっているということである。プランスタート当初は、教員の反対意見も多かったようだが、粘り強く根気よく説得しながら、今では担当者会の有効性を97.5%の教員が認めていることは、「一人も見捨てんへん」という教育委員会、教職員の熱い思いを感じた。
《提言》 深谷市においても学校教育には相当な力を入れていると認識している。それにもまして、全国から110以上の団体が視察に訪れる茨木市の取り組みは、教育委員会、教員が一体となって「誰一人落ちこぼれさせてたまるか。」という強い情熱を感じさせた。
学力テストの結果で一喜一憂することなく、その結果をチームで分析し、授業や施策に反映させていくスタンスは大切であると思う。
茨木市の担当者が説明した
・学力の推移に着目(他校との比較はしない)
・学力低位層と高位層に着目(平均正答率だけでは見えない)
・学力を下支えする5つの力の設定(ゆめ力・自分力・つながり力・学び力・体力)
はどれも大事な視点である。深谷市の教育についても改めて、教育委員会の在り方、役割について考えさせられた。教育は長い目で見る必要があり、押しつけではない指導体制、学校との一体性についてしっかり考え、今後の施策に活かしていきたい。